老後も現役として働き続けたいと考える会社員にとって、避けて通れないのが「在職老齢年金」の仕組みです。
高年齢者の雇用が推進される一方で、「働くと年金がカットされてしまうのでは?」という不安を持つ方も少なくありません。
さらに、2026年4月には年金制度の大幅な改正が予定されており、支給停止となる基準額が引き上げられることが決定しています。
これにより、これまでは年金が減額されていた層でも、満額または多くの年金を受け取りながら働けるようになります。
本記事では、在職老齢年金の基本的な仕組みから、2026年改正による具体的な変更点、年金が減額される基準の計算方法までをゼロワン編集部が分かりやすく解説します。
賢い働き方や老後資金の作り方も合わせてご紹介しますので、将来のライフプランにぜひお役立てください。
そもそも「在職老齢年金」とは?3つの基本ポイントで理解する
在職老齢年金とは、60歳以降に会社員や公務員として厚生年金に加入しながら働く人が、老齢厚生年金を受け取る際に、給与などの収入額に応じて年金額の一部または全額が支給停止(減額)される仕組みです。
この制度を正しく理解するために、まずは押さえておくべき3つの基本ポイントを解説します。
1. 減額対象となるのは「厚生年金」の報酬比例部分のみ
日本の公的年金制度は、すべての国民が加入する「老齢基礎年金(1階部分)」と、会社員や公務員が上乗せして加入する「老齢厚生年金(2階部分)」の2階建て構造になっています。
このうち、在職老齢年金による支給停止の対象となるのは「老齢厚生年金」のみです。
自営業やフリーランスの方などが受け取る「老齢基礎年金」は、どれだけ働いて高い収入を得たとしても、一切減額されることはありません。
つまり、在職老齢年金はあくまで「厚生年金保険の被保険者」として働きながら年金をもらう人だけのルールとなります。
2. 支給停止になっても「働き損」とは限らない理由
給与が高いことで年金がカットされると、「働くモチベーションが下がる」「働き損になるのでは?」とネガティブに捉えられがちです。
しかし、在職中に厚生年金保険料を支払い続けることには、大きなメリットも存在します。
その代表的な制度が、65歳以降に働きながら厚生年金を納めると、毎年1回、年金額が改定されて受給額が増える「在職定時改定」です。
納めた保険料が翌年以降の年金にしっかり反映され、生涯にわたって受け取れる年金額が段階的に増えていく仕組みになっています。
また、年金が支給停止になったとしても、「給与+一部受給できる年金」の合計額は、単に仕事をセーブして年金を満額もらう場合よりも多くなるケースがほとんどです。
3. 2026年4月より「支給停止調整額」の基準が大幅に引き上げ
在職老齢年金による支給停止が発生するかどうかを決める境界線のことを「支給停止調整額」と呼びます。
現行(2024・2025年度)の基準額は「51万円」ですが、2026年4月からは年金制度改正にともない、この基準額が「65万円」へと大幅に引き上げられることになりました。
この引き上げにより、月々の給与と年金の合計額が65万円以下であれば、年金が1円もカットされることなく満額支給されるようになります。
これまでは高所得とみなされ、年金を減額されていたシニア層にとって、大きな追い風となる大改正と言えます。
過去にも2022年4月に、60〜64歳前半の支給停止調整額(旧28万円)が65歳以上の基準(当時47万円)へ引き上げられ、一元化されました。2026年改正は、それに続く大きな緩和措置となります。
「在職老齢年金」で年金が減る基準と具体的な計算方法
それでは、具体的にどのような計算式で年金がカットされるのか、その仕組みを分かりやすく整理していきます。
2026年4月以降に適用される「基準額65万円」をベースに解説します。
支給停止の基準は月額65万円(2026年度適用)
年金の支給停止を判定するために用いられるのは、以下の2つの数値の合計額です。
① 基本月額:老齢厚生年金(報酬比例部分)の年間受給額を12で割った「1ヶ月あたりの年金額」
② 総報酬月額相当額:毎月の給与(標準報酬月額)に、直近1年間のボーナス(標準賞与額)の12分の1を加えた「1ヶ月あたりの収入額」
「基本月額 + 総報酬月額相当額」の合計が65万円以下であれば、年金は全額支給されます。
この合計が65万円を超えた場合に、超過した金額に応じて年金が一部または全額支給停止となります。
在職老齢年金の支給停止額を求める計算式
合計額が65万円を超えてしまった場合の、具体的な「支給停止額(カットされる月額)」の計算式は以下の通りです。
支給停止額(月額) = (基本月額 + 総報酬月額相当額 - 65万円) ÷ 2
この計算式のポイントは、「基準となる65万円を超えた金額の『半分』が年金から引かれる」という点にあります。
例えば、給与と年金の合計が75万円だった場合、基準の65万円を10万円オーバーしています。
その半分にあたる「5万円」が、毎月の老齢厚生年金から支給停止(減額)されることになります。
「総報酬月額相当額」を算出する方法
計算式に出てくる「総報酬月額相当額」は、単なる基本給ではなく、以下のように賞与や手当を含めた社会保険上の「標準報酬」をベースに計算します。
【計算方法】
総報酬月額相当額 = その月の標準報酬月額 + (直近1年間の標準賞与額の合計 ÷ 12)
標準報酬月額には、基本給のほか、役職手当、残業代、通勤手当なども含まれます。
また、ボーナス(標準賞与額)も12分割されて毎月の「総報酬月額相当額」に加算されるため、「賞与がある月だけ急に年金がカットされる」ということではなく、年間を通じて平準化されて年金額が調整される仕組みになっています。
【ケース別】「在職老齢年金」で年金が減る・減らないパターンの判断基準
在職老齢年金の適用により、実際に年金が「どうなるか」は大きく分けて3つのパターンに分類されます。
それぞれのケースに該当する具体的な条件について詳しく確認していきましょう。
ケース1:年金が減額されずに全額支給されるケース
最も多くのシニア労働者が該当するのが、年金が全く減らされないケースです。
条件は以下の通りです。
例えば、老齢厚生年金が月15万円(年間180万円)、給与+ボーナスの月換算が40万円の場合、合計額は55万円になります。
合計額が65万円以下であるため、老齢厚生年金は1円も減らされることなく、15万円満額を受け取ることができます。
ケース2:年金の一部が支給停止(一部減額)となるケース
給与と年金の合計が65万円を超え、かつ年金のカット額が、受け取る予定の年金額よりも少ない場合、一部支給停止となります。
条件は以下の通りです。
例えば、年金月額が15万円、給与+ボーナス月換算が60万円の場合、合計額は75万円です。
基準額65万円を差し引くと10万円となり、その半分の「5万円」が支給停止額(カット額)になります。
年金月額15万円からカット額の5万円を引いた「10万円」が、一部支給として実際に手元に支払われます。
ケース3:年金が完全に全額支給停止となるケース
収入が非常に多く、年金のカット額が元々の年金月額(基本月額)と同等以上になってしまう場合は、厚生年金が一切受け取れなくなります。
条件は以下の通りです。
算出された「支給停止額」 ≧ 「基本月額」
例えば、年金月額が10万円、給与+ボーナス月換算が85万円の場合、合計額は95万円です。
95万円から65万円を引いた30万円の半分、すなわち「15万円」が支給停止額として計算されます。
この場合、カット額(15万円)が本来の年金月額(10万円)を超えてしまうため、その月の老齢厚生年金は全額支給停止(0円)となります。
老齢厚生年金が全額支給停止になると、扶養している配偶者や子がいる場合に加算される「加給年金」も支給されなくなりますので注意が必要です。ただし、個人の加入履歴などに基づく「経過的加算」は、在職老齢年金の減額対象外となるため、全額受け取ることができます。
給与と年金額の組み合わせ別「在職老齢年金」シミュレーション
制度改定後の「65万円基準(2026年度適用)」をもとに、様々な給与(賞与を含む月換算)と年金月額のパターンで、最終的に受け取れる年金額がどう変わるのかをシミュレーションしてみましょう。
※以下はすべて2026年4月以降の「支給停止調整額:65万円」に基づき、ボーナスがないと仮定した場合の試算です。
| パターン | 基本月額(年金) | 総報酬月額(給与等) | 合計額 | 月々の支給停止額 | 実際に貰える年金 | 総収入(給与+年金) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| A:標準収入 | 12万円 | 35万円 | 47万円 | 0円 | 12万円 | 47万円 |
| B:高め収入 | 15万円 | 50万円 | 65万円 | 0円 | 15万円 | 65万円 |
| C:基準突破(一部停止) | 15万円 | 56万円 | 71万円 | 3万円 | 12万円 | 68万円 |
| D:高所得(一部停止) | 20万円 | 60万円 | 80万円 | 7.5万円 | 12.5万円 | 72.5万円 |
| E:超高所得(全額停止) | 10万円 | 80万円 | 90万円 | 12.5万円(全額) | 0円 | 80万円 |
上記のシミュレーション表から分かるように、合計額が65万円を超えたとしても、手取りの「総収入(給与+年金)」は増え続ける設計になっています。
例えばパターンCとDを比較すると、支給停止額は増えていますが、最終的な総収入は68万円から72.5万円にアップしています。
年金が減るのが嫌だからと労働をセーブするよりも、働いてしっかり給与を稼いだ方が、生活全体の収入面では大きくプラスになるという事実は、ライフプラン設計において非常に重要です。
「在職老齢年金」に関して必ず知っておくべき注意点
在職老齢年金のルールを考える上で、単なる現在の受給シミュレーションだけでなく、数々の重要な補足ポイントや例外措置を知っておく必要があります。
知らずに損をしてしまわないために、以下の2つのポイントを押さえておきましょう。
1. 退職後や70歳到達後に年金額が再計算される仕組み
在職中に支給停止となった年金は、退職して厚生年金被保険者でなくなったとき、あるいは70歳に達して厚生年金保険の被保険者資格を喪失したときに、それまでの加入実績を元に再計算されます。
これを「退職改定」または「70歳到達時の改定」と呼びます。
在職中に保険料を支払い続けた期間は無駄にならず、仕事を辞めたり、70歳になったりした時点で年金額が増額されます。
また、先述した「在職定時改定」により、65歳以降は毎年10月から、前年までの勤務実績が反映され、段階的に受け取れる年金が増えていきます。
2. 個人事業主やフリーランスは在職老齢年金の対象外
在職老齢年金制度の適用条件は、「厚生年金保険の被保険者であること」です。
そのため、個人事業主(フリーランス)として働き、高い事業所得を得ている場合は、いくら稼いでも年金は1円もカットされません。
会社員としての現役引退後に、個人事業主として起業したり、業務委託という形で働いたりする場合は、在職老齢年金の対象から外れます。
そのため、老齢厚生年金を満額もらいながら、ビジネスの売上を限界まで伸ばすことが可能になります。
在職老齢年金の減額を回避して賢く老後資金を作る働き方
シニアになっても自分らしい働き方を続けながら、お金を最大限に確保するには、在職老齢年金の性質を利用した戦略的な働き方が求められます。
代表的なアプローチ方法をいくつか見ていきましょう。
方法①:勤務時間を調整して厚生年金の被保険者にならない範囲で働く(週の所定労働時間が通常の会社員の4分の3未満など)
方法②:個人事業主として独立し、業務委託として元いた会社や別の会社と契約を結ぶ
方法③:2026年の改正(支給停止基準の65万円への引き上げ)に合わせて、年金の減額ラインに収まるよう、あえて給与とボーナスのバランスを調整する
これらのような働き方の工夫によって、不必要な年金のカットを防ぐことが可能です。
一方で、近年は物価の上昇や社会保険料の負担増など、老後の経済を取り巻く環境は決して楽なものばかりではありません。
老後に向けた自助努力による資産形成の必要性が高まる中、近年注目を集めているのが「自動投資ツール」の活用です。
例えば、初期費用1万円からスタートでき、特別な投資知識がなくともAIが完全放置で取引を行ってくれる「ゼロワンシステム」(https://zeroone-aisystem.com/)のような、短期決済型で相場変動リスクに強いAI自動売買システムを活用するのも有効な手段です。
こうした自動売買による利益は、在職老齢年金のカット判定に使われる「厚生年金の給与(標準報酬)」には一切算入されません。
つまり、いくら投資で利益が出たとしても、年金が支給停止される心配をすることなく手元資金を増やせます。
よくある質問
まとめ:「在職老齢年金」の仕組みを正しく理解して賢い老後設計を
在職老齢年金は、働く高齢者にとって複雑で分かりにくい仕組みに感じられますが、基本のルールを一度理解してしまえば、決して「働き損」ではないことが見えてきます。
最後に、本記事で解説した重要ポイントを整理しましょう。
・支給停止の対象となるのは「老齢厚生年金」だけで、老齢基礎年金は減額されない
・2026年4月の法改正により、支給停止の基準額が51万円から「65万円」に大幅に引き上げられる
・給与と年金の合計が65万円を超えても、カットされるのは超過分の「半分」なので総手取りは増えやすい
・厚生年金を納めながら働くことで、在職定時改定や退職改定により将来もらえる年金額は手厚くなる
・個人事業主としての活動や、投資(AI自動売買など)による資産形成は、年金カット判定の対象外
在職老齢年金による過度な減額を心配して無理に就業制限をするよりも、制度改正による緩和を上手に生かしながら積極的にキャリアを継続し、同時に自助努力での資産運用を組み合わせていくことこそが、これからの長寿社会を豊かに生き抜く賢いアプローチです。
まずはご自身の見込み年金額と将来の給与予測を照らし合わせ、最適な働き方のプランニングからスタートしてみてはいかがでしょうか。


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