夫が他界した後の生活設計において、公的年金から支給される遺族年金は、残された配偶者の生活を維持するための極めて重要な収入源となります。
しかし、自身が70歳や80歳といった高齢期に達している場合、「高齢を理由に受給できないのではないか」と不安を抱く方も少なくありません。
結論から申し上げますと、公的年金制度における遺族年金には、受け取る側の年齢に上限は設けられていません。
つまり、70歳以上であっても要件を満たしていれば、遺族年金を受け取ることが可能です。
この記事では、プロのSEOライターであるゼロワン編集部が、70歳以上で夫を亡くした妻が遺族年金(主に遺族厚生年金)を受け取るための具体的な受給要件、自身の老齢年金との調整ルール、実際の受給額シミュレーション、そして手続き方法について分かりやすく解説します。
高齢期の生活を支える公的年金!70歳以上でも遺族厚生年金は受け取れるのか?
夫が亡くなった際、妻の年齢が70歳以上、あるいは80歳以上であっても、遺族年金を受け取れる可能性は十分にあります。
受給を判断するにあたり、受け取る側の年齢が障壁になることはありません。
最も重要となるのは、「亡くなった夫の年金加入状況」と「夫婦の生計維持関係」です。
高齢だからといって手続きを諦めてしまうと、本来受け取れるはずの生活資金を生涯にわたって失うことになりかねません。
遺族厚生年金の受給可否を決める3つの要件
70歳以上の妻が遺族厚生年金を受け取るためには、以下の3つの主要要件をすべて満たしている必要があります。
受給を判断するための3大要件
① 死亡した夫の年金加入要件:厚生年金の被保険者であった、または受給資格期間が25年以上あったこと
② 生計維持関係の要件:夫の死亡当時、夫によって生計を維持されていたこと(年収850万円未満など)
③ 遺族の範囲と優先順位:配偶者(妻)であること(子がいない場合でも妻は最優先されます)
特に見落としがちなのが「生計維持関係」です。
夫婦が同居し、妻の年収が原則として850万円(所得で655.5万円)未満であれば、この生計維持要件はクリアしたとみなされます。
また、別居していた場合であっても、仕送りがあったり、定期的な連絡があったりして生計を共にしていた事実が客観的に証明できれば、受給が認められるケースがあります。
【状況別】70歳以上・80歳以上の遺族厚生年金受給可否一覧
妻の状況や亡くなった夫の現役時代の働き方によって、受給できるかどうかが以下のように分かれます。
- 夫が会社員・公務員(厚生年金加入者)だった場合:妻は生涯にわたり遺族厚生年金を受給できます(要件をクリアしている場合)。
- 夫が自営業・フリーランス(国民年金のみ)だった場合:厚生年金がないため、遺族厚生年金は支給されません。
- 妻自身が専業主婦だった場合:夫の厚生年金加入歴に基づき、遺族厚生年金を受給できます。
自営業の夫を亡くした70歳以上の妻の場合、遺族厚生年金の対象外となります。
さらに、後述する遺族基礎年金も「子の有無」が条件となるため、高齢期の受給は難しくなります。自身の家庭環境がどちらに該当するかを正確に把握することが重要です。
遺族基礎年金と遺族厚生年金の違い!70歳以上の妻が対象となる仕組み
日本の公的年金制度における遺族年金は、2階建ての構造になっており、「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」に分かれています。
70歳以上の妻がどちらを受け取れるかは、それぞれの年金が定める「受給対象者」のルールを理解する必要があります。
遺族基礎年金は「子のいる配偶者」が対象となるため70歳以上は原則対象外
遺族基礎年金(1階部分)は、亡くなった人によって生計を維持されていた「高校卒業まで(18歳到達年度の末日まで)の子どもがいる配偶者」または「子ども自身」に支給されるものです。
70歳以上の妻は、原則として遺族基礎年金を受け取ることができません。理由は、すでに子どもが成人して独立しており、「18歳到達年度末日までの子」という要件を満たさないためです。
そのため、70歳以上で夫を亡くした妻にとって、生活を支える主役となるのは、もう一つの遺族厚生年金となります。
遺族厚生年金は「子のいない妻」も対象になるため70歳以上でも受給可能
遺族厚生年金(2階部分)は、会社員や公務員など厚生年金保険の被保険者であった人が亡くなった場合に支給されるものです。
こちらの年金は、遺族基礎年金とは異なり、子どもの有無に関わらず、配偶者であれば受給することができます。
したがって、子どもが全員独立した後に夫を亡くした70歳以上の妻であっても、夫が厚生年金の加入要件を満たしていれば、遺族厚生年金をしっかりと受け取ることができます。
夫が自営業(国民年金のみ)だった場合と「寡婦年金」が対象外となる理由
夫がずっと自営業者やフリーランスであり、生涯で一度も厚生年金に加入していなかった場合は、遺族厚生年金の受給権自体が発生しません。
この場合、残された妻のために「寡婦年金」という救済制度が用意されていますが、これには厳しい年齢制限があります。
寡婦年金は「60歳から65歳になるまで」の間しか支給されません。そのため、夫が亡くなった時点で既に70歳以上になっている妻は、寡婦年金を請求・受給することはできません。
このように、夫が自営業であった場合は、70歳以上の妻への公的な遺族年金の保障は極めて薄くなってしまうのが現状の公的年金制度の課題です。
気になる受給額!70歳以上の遺族厚生年金の計算方法と老齢年金との併給調整ルール
実際に遺族厚生年金がいくらもらえるのか、また自分の老齢年金と一緒に両方満額もらえるのかという点は、老後の生活設計を立てる上で最も重要なポイントです。
結論から言うと、65歳以上になると「併給調整ルール」が適用されるため、夫の遺族年金と自分の老齢年金を単純に足した金額が全額もらえるわけではありません。
遺族厚生年金の基本的な計算式
遺族厚生年金の基本となる受給額は、以下の計算式によって決定されます。
【遺族厚生年金の基本算定】
亡くなった夫が受け取るはずだった(または受け取っていた)「老齢厚生年金(報酬比例部分)」の 4分の3(75%)
夫が会社員としての現役時代に高収入であり、厚生年金の加入期間が長いほど、報酬比例部分の金額が高くなるため、結果として妻が受け取る遺族厚生年金も多くなります。
65歳以上に適用される「併給調整ルール」の仕組み
65歳以上の人が「自身の老齢年金(老齢基礎年金・老齢厚生年金)」と「遺族厚生年金」の両方の受給権を持つ場合、「自身の老齢厚生年金を優先して受給する」というルールが法律で定められています。
具体的には、以下のように調整されます。
① 自身の「老齢基礎年金」:これは調整されず、全額そのまま受け取れます。
② 自身の「老齢厚生年金」:これも全額そのまま受け取ります。
③ 遺族厚生年金:計算した「遺族厚生年金額(夫の厚生年金の4分の3)」が、自身の「老齢厚生年金額」よりも多い場合、その【差額分】のみが遺族厚生年金として上乗せ支給されます。
つまり、妻自身の老齢厚生年金の額が、夫の遺族厚生年金(夫の厚生年金の4分3)を上回っている場合は、遺族厚生年金としての実質的な追加支給額は「ゼロ」になります。
この場合は、自分自身が納めてきた厚生年金に基づく「老齢厚生年金」のみを受け取ることになります。
70歳以上の妻に関係する「経過的寡婦加算」とは?
遺族厚生年金には、一定の要件を満たす妻の年金額を加算する制度があります。
その一つが「経過的寡婦加算」です。
ただし、この経過的寡婦加算が適用されるのは、昭和31年(1956年)4月1日以前に生まれた妻に限定されています。
大正・昭和初期生まれの高齢世代の妻に対する激変緩和措置としての位置付けであるため、自身の生年月日を確認しておくことが必要です。
具体的な受給額シミュレーション!夫が亡くなった後の世帯年金と不足する老後資金の対策
ここでは、平均的な年金受給額を想定し、夫が死亡した後に70歳の妻の年金収入がどのように変化するのかを具体的にシミュレーションします。
夫が会社員、妻が専業主婦だった世帯のシミュレーション
以下の条件の夫婦を想定します。
【シミュレーションの前提条件】
・夫(死亡時75歳):老齢基礎年金 6.5万円 + 老齢厚生年金 10万円 = 月額 16.5万円
・妻(現在70歳):老齢基礎年金 6.5万円(厚生年金なし:専業主婦) = 月額 6.5万円
・夫婦の合計年金額:月額 23万円
夫が亡くなった後、妻が受け取れる年金額は以下のように計算されます。
夫死亡後の妻の年金額の計算
① 妻自身の老齢基礎年金:6.5万円(そのまま支給)
② 遺族厚生年金(夫の老齢厚生年金10万円の4分の3):7.5万円
③ 妻自身の老齢厚生年金:0円(専業主婦のため)
★ 受給総額:① 6.5万円 + ② 7.5万円 = 月額 14万円
このシミュレーションの場合、夫婦で月23万円あった収入が、夫の死亡によって月14万円(9万円の減額)へと一気に縮小してしまいます。
住居費や光熱費などの固定費は一人になっても半額にはならないため、残された妻の生活は厳しくなるケースが多いのが実情です。
高齢期における老後資金の不足を補うための備え
夫の他界によって世帯収入が大きく減少することを見据え、現役時代や定年直後からの資産形成・資産運用が極めて重要視されています。
預貯金を取り崩すだけの生活に不安を感じる場合は、安全性を重視した運用の仕組みを導入することも選択肢の一つです。
例えば、初心者や高齢期からでも取り組みやすい仕組みとして、知識不要・完全放置で初期費用1万円から始められる「ゼロワンシステム」のようなAI自動売買システムを活用するのも手です。
短期決済型で相場変動リスクに強く、手間をかけずに老後資金の補填や資産維持を狙える手段として、賢く資産形成を始める層が増えています。
2025年(令和7年)の年金制度改正議論!今後の遺族厚生年金の見直し方針と影響
日本の公的年金制度は、社会情勢や財政検証に合わせて、概ね5年ごとに見直し(法改正)が行われます。
次回の大きな法改正が予定されているのが「2025年(令和7年)」です。
現在、厚生労働省の社会保障審議会において、遺族厚生年金のあり方に関する抜本的な見直し議論が進められています。
共働き世帯の増加に伴う「男女平等の給付ルール」へのシフト
これまでの遺族厚生年金は、「男性が働き、女性が専業主婦として家事や育児を担う」という昭和の家族モデルを前提に設計されていました。
そのため、妻が遺族年金を受け取る際の要件は、夫が受け取る際の要件(55歳以上などの年齢制限あり)よりも大幅に優遇されていました。
しかし、共働きが当たり前となった現代において、この不均衡が問題視されています。
2025年の改正議論では、「男女間における受給要件の格差解消」が主な論点となっています。
「子のいない若年配偶者」における遺族厚生年金の有期給付化
もう一つの大きな論点が、「有期給付(受け取れる期間を限定する仕組み)」の拡大です。
現行制度でも「30歳未満で子どものいない妻」に対しては、遺族厚生年金の支給期間が5年間に限定されていますが、この対象年齢を引き上げる(例:40代や50代まで広げる)案が浮上しています。
既に70歳以上である受給者への影響は極めて低いです。年金制度の改正において、すでに受給権が発生している高齢世代の既得権が遡って奪われる可能性は極めて低く、基本的には現役世代や今後新たに受給する世代が対象となります。
ただし、将来的に年金の実質的な価値を引き下げる「マクロ経済スライド」などの調整は続くため、額面が維持されても実質的な購買力が低下するリスクには引き続き備える必要があります。
遺族厚生年金を受け取るための必要書類と手続きの流れ
遺族厚生年金は、夫が他界した後に自動的に口座へ振り込まれるようになるものではありません。
受給を始めるには、「遺族年金請求書」を作成し、必要書類を添えて年金事務所等へ提出(請求)する必要があります。
手続きに必要な主な書類一覧
70歳以上の妻が手続きする際に必要となる主な必要書類は以下の通りです。
【請求手続きの必要書類】
① 年金手帳または基礎年金番号通知書(夫婦双方のもの)
② 戸籍謄本(婚姻関係および夫の死亡日を証明するため)
③ 世帯全員の住民票の写し(生計を共にしていたことの証明)
④ 死亡した夫の住民票の除票(または死亡診断書のコピーなど)
⑤ 妻の所得証明書または非課税証明書(生計維持要件の確認のため)
⑥ 年金を受け取るための銀行口座の通帳(またはキャッシュカードのコピー)
※すでに妻自身が老齢年金を受給している場合は、一部の書類(住民票や所得証明書等)を省略できる場合があります。
二度手間を防ぐためにも、事前に近くの年金事務所へ電話で確認することをお勧めします。
遺族厚生年金請求手続きの4ステップ
手続きは、以下の手順に沿って行います。
ステップ①:最寄りの年金事務所で予約をする
年金相談は完全予約制となっています。まずは「年金ダイヤル」や最寄りの年金事務所に電話し、予約を確保します。
ステップ②:必要書類の収集・請求書の記入
戸籍謄本や住民票などの公的証明書を役所で取得し、年金事務所から配布された「遺族年金請求書」に記入します。
ステップ③:年金事務所の窓口で申請書類を提出する
予約日に必要書類一式を持参し、相談員の確認を受けながら申請を行います。書類に不備がなければ受理されます。
ステップ④:年金証書の受け取りと初回の振り込み
申請から約1〜2ヶ月後に「年金決定通知書・年金証書」が郵送で届きます。その後、約1〜2ヶ月後に初回の遺族年金が指定口座へ振り込まれます。
手続き開始から実際に最初の振り込みが実行されるまでには、早くても3〜4ヶ月程度の時間がかかります。
その間の当面の生活資金については、あらかじめ預貯金口座等で確保しておくことが大切です。
70歳以上で遺族厚生年金を請求・受給する際の注意点
高齢期の遺族年金手続きにおいて、申請者が陥りがちな「トラブル」や「見落としがちな盲点」がいくつか存在します。
後から損をしたり後悔したりしないよう、以下の点には特に留意してください。
① 遺族年金の請求手続きには「5年の時効」がある
公的年金を受け取る権利(受給権)は、夫が死亡した日の翌日から数えて5年が経過すると、時効により消滅します。
夫が亡くなってから5年以上放置してしまった場合、過去にさかのぼって受給できる年金は直近の5年分のみとなります。それ以前の年金は一切受け取ることができなくなるため、必ず速やかに請求を行ってください。
② 収入制限(年収850万円の壁)の判定基準
遺族厚生年金を受け取るためには、妻自身の前年の年収が850万円(または所得655.5万円)未満でなければなりません。
70歳以上の多くの方はリタイアしており、年金収入のみであるためこの要件をクリアしている場合がほとんどです。
しかし、自身で会社を経営していたり、不動産所得が多額にあったりする方は、この上限を超えてしまう可能性があります。
その場合、生計維持要件を満たさないと判定され、遺族厚生年金が支給されないケースがあります。
③ 支給された遺族年金は「非課税」扱いとなる
遺族厚生年金や遺族基礎年金は、税法上「非課税所得」に分類されます。
そのため、受け取った遺族年金に対して所得税や住民税は課せられません。また、健康保険の扶養義務の判定などにおいても優遇されるため、大きなメリットとなります。
よくある質問
70歳以上で夫を亡くした配偶者の方から寄せられる、遺族年金に関するよくある質問に回答します。
まとめ:遺族厚生年金の制度を理解して老後の生活設計を最適化しよう
70歳以上で夫を亡くした場合であっても、夫が会社員や公務員としての厚生年金加入履歴を持っていれば、残された妻は生涯にわたり遺族厚生年金を受給することができます。
受け取る側の年齢を理由に受給が制限されることはありません。
ただし、自身がすでに老齢年金を受給している場合、「自身の老齢厚生年金の受給が優先され、遺族厚生年金は差額分のみの支給になる」という併給調整ルールを正しく理解しておくことが不可欠です。
これにより、夫婦の合計年金から世帯全体の年金収入が大幅に減少することを見越し、余裕を持った老後資金の計画を立てる必要があります。
少子高齢化が進み、今後の公的年金制度の改正動向からも目が離せない現在、早い段階から家計の収支を見直し、預貯金以外に自分で老後資金を増やすための多様な選択肢を持っておくことが、将来の大きな安心へとつながります。


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