厚生年金を70歳まで払い続けると受給額はいくら増える?年収別シミュレーションと損益分岐点・注意点を徹底解説

人生100年時代と呼ばれる現代において、何歳まで働き、何歳まで年金保険料を支払うべきかは、老後の生活設計を左右する極めて重要な問題です。
多くの人が「働けるうちは長く働きたい」と考える一方で、「高齢になっても厚生年金保険料を支払い続けるのは本当に得なのか」という疑問を抱いています。

 

厚生年金保険の加入期間を延ばすことは、将来受け取る年金額を確実に増やす強力な手段となります。
しかし、支払う保険料の総額と将来受け取れる年金の増額分のバランス、いわゆる「損益分岐点」を正しく理解しておかなければ、思わぬ損をしてしまう可能性もあります。

 

本記事では、厚生年金を70歳まで払い続けた場合に将来の受給額がいくら増えるのかを、年収別・期間別に徹底シミュレーションします。
さらに、制度上のメリットや知っておくべき注意点、年金の繰下げ受給との相乗効果についても、ゼロワン編集部が客観的な視点からわかりやすく解説します。

 

目次

厚生年金保険の加入上限年齢は何歳まで?70歳到達時のルールと制度の仕組み

日本の年金制度において、厚生年金保険に加入して保険料を支払うことができるのは、原則として「70歳未満(69歳まで)」と定められています。
この年齢制限と、70歳に達した際の手続きや例外的な制度について詳しく確認していきましょう。

 

70歳の誕生日前日に自動的に被保険者資格を喪失する

厚生年金保険の被保険者資格は、法律上、70歳の誕生日の前日に自動的に喪失することになっています。
例えば、5月15日が70歳の誕生日である人の場合、前日の5月14日に資格を喪失するため、5月分以降の厚生年金保険料を支払う必要はなくなります。

 

資格喪失の手続きは勤務先の企業が管轄の年金事務所に対して行います。
そのため、原則として個人で特別な手続きを行う必要はありません。

 

70歳以降も同じ会社で働き続ける場合、保険料の負担はゼロになりますが、給与額と年金受給額のバランスによって年金の一部または全額が支給停止となる「在職老齢年金制度」の対象にはなり続けるため注意が必要です。

 

受給資格期間が足りない場合の特例「高齢任意加入被保険者」制度

原則として70歳で厚生年金の加入期間は終了しますが、例外として70歳以降も任意で加入し続けられる制度が存在します。
これは、老齢年金を受け取るために必要な「受給資格期間(10年間=120ヶ月)」を満たしていない人のための救済措置です。

 

70歳を過ぎても受給資格を満たしていない場合、適用事業所で働き続けるなどの一定の条件を満たすことで、受給に必要な期間に達するまで「高齢任意加入被保険者」として厚生年金保険に加入することができます。
この手続きには、本人が「高齢任意加入被保険者資格取得申出書」を年金事務所に提出する必要があります。

 

高齢任意加入の場合、事業主(会社)が保険料の半額負担に同意している場合は労使折半となりますが、同意が得られない場合は本人が保険料の全額を自己負担して加入することになります。

 

厚生年金を70歳まで払い続けると受給額はいくら増える?年収別の詳細シミュレーション

定年後も厚生年金に加入して保険料を支払い続けることで、将来受け取る老齢厚生年金の「報酬比例部分」が着実に増額されます。
では、実際にいくら増えるのか、計算式と具体的な年収別のシミュレーションを見てみましょう。

 

報酬比例部分の受給額を決定する厚生年金の計算式

将来受け取る厚生年金額の増加分は、厚生年金に加入していた期間の収入(平均標準報酬額)と、加入月数に基づいて算出されます。
2003年(平成15年)4月以降の加入期間に対する基本的な計算式は以下の通りです。

 

老齢厚生年金の増額分(年額) = 平均標準報酬額 × 5.481 / 1000 × 加入月数

 

※「平均標準報酬額」とは、毎月の基本給などの「標準報酬月額」と賞与(ボーナス)の総額を合わせた平均月額を指します。
この計算式からもわかるように、現役時代の収入が高く、加入する期間が長いほど、将来もらえる年金額は比例して多くなる仕組みとなっています。

 

【年収別】65歳から70歳まで5年間働いた場合の年金増額シミュレーション

それでは、65歳から70歳までの5年間(60ヶ月)、厚生年金に加入して働いた場合の年金増額分を年収別にシミュレーションしてみましょう。
(※計算をわかりやすくするため、賞与は含めず、毎月の給与が均等であると仮定して算出しています)

 

【年収別・5年間の厚生年金加入による年金増額シミュレーション】

■ 平均年収240万円(平均標準報酬額 20万円)の場合:
・20万円 × 5.481/1000 × 60ヶ月 = 年額 約6.6万円(月額 約5,500円)の増額

■ 平均年収360万円(平均標準報酬額 30万円)の場合:
・30万円 × 5.481/1000 × 60ヶ月 = 年額 約9.9万円(月額 約8,200円)の増額

■ 平均年収480万円(平均標準報酬額 40万円)の場合:
・40万円 × 5.481/1000 × 60ヶ月 = 年額 約13.2万円(月額 約11,000円)の増額

■ 平均年収600万円(平均標準報酬額 50万円)の場合:
・50万円 × 5.481/1000 × 60ヶ月 = 年額 約16.4万円(月額 約13,700円)の増額

 

例えば、平均年収360万円で5年間厚生年金に加入すると、70歳以降に受け取る年金が生涯にわたって毎年約9.9万円増えることになります。
長生きすればするほど、この累積増額分による恩恵は非常に大きくなります。

 

60歳・65歳・70歳退職で将来の年金受給額はどう変わる?

次に、リタイアする年齢の違いによって、年金受給額がどれほど変わるのかを比較してみましょう。
前提条件として、60歳時点での年金見込額がすでに一定レベルに達しており、そこから同じ年収300万円(平均標準報酬額25万円)で働き続けたケースを想定します。

 

■ 60歳で完全に退職した場合:基準額(増額なし)
■ 65歳まで5年間働いた場合:年額 約8.2万円の増額(累計増額)
■ 70歳まで10年間働いた場合:年額 約16.4万円の増額(累計増額)

 

このように、60歳から70歳まで10年間厚生年金に加入して働き続けた場合、65歳でリタイアしたケースと比較して年金受給額の増額幅は約2倍に膨らみます。
高齢期の就労を長く継続するほど、老後の生活を支える年金という名の「一生涯の個人年金」を強固にできることがわかります。

 

支払う厚生年金保険料と将来増える年金額の「損益分岐点」

厚生年金額が増える一方で、働く期間中は毎月の給与から厚生年金保険料が天引きされ続けます。
ここで気になるのが、「支払った保険料の元を取るには、何歳まで生きる必要があるのか」という損益分岐点です。

 

現在、厚生年金保険料率は18.3%となっており、これを会社と本人が半分ずつ折半して負担します。
したがって、自己負担分は給与の「9.15%」です。

 

年収360万円(月収30万円)の人が65歳から70歳までの5年間で支払う保険料と、増える年金の関係を計算してみましょう。

 

・5年間の保険料自己負担総額:30万円 × 9.15% × 60ヶ月 = 約165万円
・5年間の加入で増える年金額(年額):30万円 × 5.481/1000 × 60ヶ月 = 約9.9万円
・元が取れるまでの年数(損益分岐点):165万円 ÷ 9.9万円 = 約16.6年

 

上記の通り、支払った保険料を回収するための期間は「約16.6年」となります。
70歳から年金を受給し始めると仮定した場合、87歳(70歳 + 16.6年)を超えて長生きすれば、支払った保険料以上のメリットを享受できることになります。

 

日本人の平均寿命(女性約87歳、男性約81歳)や、健康寿命の延伸を考慮すると、この損益分岐点は十分にクリア可能な範囲内であると考えられます。
ただし、早くに亡くなってしまった場合には保険料の方が高くなってしまうリスクがあることも、客観的な事実として把握しておく必要があります。

 

70歳まで厚生年金保険料を支払うメリットと知っておくべき注意点

70歳まで厚生年金に加入し続けるという選択肢には、老齢厚生年金の増額以外にもさまざまな影響が存在します。
ここでは、選択を誤らないために整理しておきたいメリットと注意点を、それぞれ2つのポイントに絞って詳しく解説します。

 

メリット①:生涯にわたって受け取れる老齢厚生年金が着実に増える

最大のメリットは、何といっても将来の老齢厚生年金額が基礎から底上げされる点です。
国の公的年金は終身支給であるため、万が一100歳まで生きたとしても、増額された状態の年金が死ぬまで支給され続けます。

 

民間保険会社の個人年金保険などとは異なり、インフレ(物価上昇)に合わせて受給額が微調整される仕組み(マクロ経済スライドなど)もあるため、インフレ耐性のある強固な生活基盤を構築できます。

 

メリット②:給与収入があることで「年金の繰下げ受給」を選択しやすくなる

70歳まで働き厚生年金に加入することで得られる副次的な大メリットとして、年金の「繰下げ受給」を無理なく行えるようになるという点が挙げられます。
年金は本来65歳から受給できますが、受給開始を遅らせる(繰り下げる)ことで、年金額を増やすことが可能です。

 

繰下げによる増額率は「1ヶ月遅らせるごとに0.7%」です。
つまり、70歳まで受給を5年間我慢して繰り下げると、年金額は本来の額から42%も増加します。

 

70歳まで働き、その給与収入だけで生活を賄うことができれば、年金そのものに一切手をつけずに70歳まで受給を繰り下げることが容易になります。
「厚生年金への加入による増額」と「繰下げ受給による42%増額」のダブルの効果により、老後の受給額を爆発的に増やすことができるのです。

 

注意点①:給与が増えるほど社会保険料や税金の負担も重くなる

一方で、高齢期に働き続けることにはデメリットや負担も伴います。
その代表格が、給与から天引きされる社会保険料や所得税、住民税の負担です。

 

70歳まで厚生年金に加入して働くということは、当然、健康保険料や雇用保険料(これらは70歳以降も必要)、さらには所得に応じた税金も発生し続けることを意味します。

 

額面の給与がどれだけ高くても、そこから引かれる手取り額のシミュレーションを行っておかなければ、「思ったほど手元にお金が残らない」というギャップに悩まされる可能性があります。
事前に、税金や保険料がどれくらい引かれるのかを見積もっておくことが不可欠です。

 

注意点②:働きすぎると年金が減額される「在職老齢年金」の壁に注意

65歳以降、会社で働きながら厚生年金を受け取る場合に最も注意しなければならないのが、「在職老齢年金」という制度です。
この制度により、給与と年金の合計額が一定の基準を超えると、厚生年金の一部または全額が支給停止(カット)されてしまいます。

 

2024年現在、支給停止の基準となる金額は「毎月の給与(総報酬月額相当額) + 年金月額 = 50万円」となっています。
この合計額が50万円を超えた場合、超えた分の半額にあたる年金額が支給停止となります。

 

せっかく一生懸命に働いて保険料を支払っていても、現役時代の給与が高すぎるために、その期間に受け取るべき年金がカットされてしまう事態は避けたいところです。
老後の働き方を決める際は、この「50万円の壁」を意識した就労調整が必要となる場合もあります。

 

「70歳まで働く・厚生年金を払う」という選択は本当にお得なのか?判断の基準

70歳まで働き、厚生年金保険料を支払い続けるべきか否かは、個人の健康状態、家族構成、そして老後に向けた資産運用の状況によって判断が分かれます。
ここでは、どのようにお得度を判断すべきか、ゼロワン編集部が3つのポイントを提案します。

 

ポイント①:自身の健康状態と予測される平均余命

厚生年金の支払いによる得失は、前述した通り「何歳まで生きられるか」という生存期間に強く依存します。
健康に自信があり、親族に長寿の方が多い場合は、70歳まで働き、保険料を多く支払って将来の受給額を最大化させる戦略が極めて有効です。

 

逆に、健康面に不安があり、早期リタイアして残りの人生を楽しみたいと考えるのであれば、無理に70歳まで厚生年金を支払う必要はありません。
60歳や65歳で退職し、健康なうちに使える資金を手元に確保することも、立派なライフプランニングの一つです。

 

ポイント②:年金だけに頼らない「自主的な資産形成」の手段を持っているか

「老後を豊かに暮らすため」に、ただ労働の対価として年金を増やすことだけが唯一の選択肢ではありません。
もし十分な貯蓄があり、それを効果的に増やす資産運用の知識や手段を持っているなら、働く期間を短くして投資の果実で生活を賄うことも可能です。

 

例えば、投資初心者であっても手軽に資産運用を行えるツールとして、AIを活用した自動運用システムが注目を集めています。
その一例として、「ゼロワンシステム」のように、高度な投資知識を必要とせず、小口の資金から完全自動で効率よく運用を行えるサービスを導入するのも一つの方法です。

 

このような自律的な運用システムを取り入れることで、無理に70歳まで労働の義務感に縛られることなく、プライベートな時間と老後資金の安定を両立させることが可能になります。
年金の増額を目的とした就労と、資産運用による資産拡大のどちらが自身のライフスタイルに合うかを、冷静に天秤にかける必要があります。

 

ポイント③:働きがいと社会とのつながりの維持

最後は、「お金の損得」を超えた精神的な側面にあります。
仕事を通じて社会に貢献し、他者とコミュニケーションを取り続けることは、認知症の予防や健康寿命の延伸に大きく寄与することが多くの研究で示されています。

 

「厚生年金を増やすため」ではなく、「自分らしく生き、社会とつながるため」に働き、その結果として年金額が増えていくという順序で捉えることができれば、働くモチベーションを最も高く維持できるでしょう。

 

厚生年金の70歳加入と保険料支払いに関するよくある質問

厚生年金の加入期間や70歳付近での制度上の運用に関して、多くの人が抱く疑問に回答します。

 

Q1. 70歳以降も働き続ける場合、厚生年金保険料は1円も引かれませんか?

はい、70歳に達した月(誕生日の前日の属する月)の翌月以降は、厚生年金保険の被保険者資格を自動的に失うため、それ以降の厚生年金保険料は一切天引きされません。ただし、健康保険料や介護保険料については引き続き天引きされます。

Q2. 70歳まで厚生年金を払うと、配偶者の「扶養」に影響は出ますか?

厚生年金に自分自身で加入している期間は、配偶者の被扶養者(第3号被保険者)ではなく、自身が「第2号被保険者」となります。70歳に到達すると厚生年金の資格は失いますが、国民年金(第3号被保険者を含む)の加入上限も原則として60歳まで(または一定の例外期間)となっているため、扶養の枠組みに大きな影響は生じません。ただし、自身の収入が年間130万円(60歳以上は180万円)を超える場合は、配偶者の健康保険の扶養から外れる必要があります。

Q3. 途中で転職したり、アルバイト勤務に変わったりしても、厚生年金の計算は引き継がれますか?

引き継がれます。転職先が厚生年金の適用事業所であり、加入条件(週の所定労働時間が正社員の4分の3以上など、または週20時間以上等の一定要件)を満たしていれば、複数の会社を渡り歩いても、アルバイト・パートの立場であっても、マイナンバーまたは年金手帳で一本化されて過去の加入履歴がすべて合算されて年金が計算されます。

Q4. 在職老齢年金で一度支給停止になった厚生年金は、後から全額戻ってきますか?

いいえ、戻ってきません。在職老齢年金の基準(合計50万円)を超えて支給停止(カット)された分の年金額は、その月の分の給与との調整によって完全に消滅するものであり、退職後や高齢期になってから遡って支給されることはありません。これが在職老齢年金制度の最大の注意点です。

Q5. 70歳まで働いても年金を増やすための期間が不足している場合、どうすれば受給資格を得られますか?

老齢年金を受け取るために必要な受給資格期間が10年(120ヶ月)に満たない場合は、70歳以降も会社に勤務していれば「高齢任意加入被保険者」として厚生年金に任意で加入し、保険料を払い続けることで受給に必要な期間を補うことができます。また、国民年金の任意加入制度を利用して、期間を満たすアプローチもあります。

 

まとめ:厚生年金を70歳まで活用して老後資金の不安を解消する方法

厚生年金を70歳まで支払い続けることは、将来受け取る老齢厚生年金額を着実に増額させ、さらに繰下げ受給を併用することで老後の経済的基盤を何倍にも強固にできる非常に有効な戦略です。
年収別のシミュレーションが示すように、長く高い収入で働くほどその増額幅は拡大し、インフレや長寿に負けない資産を用意することができます。

 

しかしながら、「保険料を回収するまでに約16〜17年の期間を要する」という損益分岐点の問題や、「月収50万円の壁」によって年金がカットされる在職老齢年金制度の仕組みを考慮する必要もあります。
定年後の働き方を決めるにあたっては、ただ漫然と働くのではなく、手取り額の見通しをしっかり持つことが不可欠です。

 

重要なのは、働くことだけを唯一の解決策とせず、多様な老後資金づくりの手段を組み合わせることです。
健康で元気に働ける期間は長く厚生年金のメリットを受けつつ、同時に早期から自律的な資産形成(例えば、完全放置で安定した運用が期待できる「ゼロワンシステム」の導入や、NISA・iDeCo等の活用)を取り入れることで、真の意味で「お金の不安から解放されたセカンドライフ」を実現できるでしょう。

 

自身の健康状態、家族への配慮、そして将来必要な資金額を冷静に見極め、人生の後半戦を輝かせるための最適なバランス設計を始めてみてはいかがでしょうか。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

目次